■~腎癌について~
こんにちは!高知市の島崎クリニックの院長島崎です。
「もしかして腎臓の病気かも…?」と不安に感じている方、あるいは「健康診断で腎臓に異常が見つかった」と言われ、腎癌について詳しく知りたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ご自身の健康に関わることですから、そのお気持ちは痛いほどよくわかります。
この記事では、腎癌の基本的な知識から、腎癌がなぜ「サイレントキラー」と呼ばれるのか、そしてどのような検査や治療法があるのかについて、泌尿器科医の視点からわかりやすく解説します。この記事を最後まで読んでいただくことで、腎癌の早期発見の重要性や、ご自身やご家族の健康を守るために何ができるのかが明確になります。
腎癌の疑いがある方、ご家族に心配な方がいらっしゃる方、そして健康診断の結果に不安を感じている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
腎癌とは一体どのような病気? 早期発見が鍵を握るその理由
腎癌は、腎臓の細胞が悪性化してできるがんです。腎臓は背中の腰の少し上に左右2つあり、血液をろ過して尿を作り、老廃物を体の外に出す重要な役割を担っています。この腎臓にできた悪性の腫瘍が腎癌です。
私が医師として多くの患者様を診察してきた中で、腎癌の診断を下す際に最も印象的なのは、患者様が「まさか自分が腎癌だなんて…」と驚かれることです。その理由は、腎癌が初期の段階では自覚症状がほとんどないからです。そのため、知らない間に進行してしまうことが多く、専門家の間では「サイレントキラー(静かなる殺人者)」と呼ばれることもあります。
腎癌の早期発見が非常に重要である理由は、主に以下の4つが挙げられます。
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治療の選択肢が広がる: 早期に発見された腎癌は、手術で病巣を完全に切除できる可能性が高く、体の負担が少ない治療法を選択できる場合があります。例えば、腫瘍の大きさや場所によっては、腎臓の一部だけを切除する「腎部分切除術」が可能です。
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根治の可能性が高まる: 早期腎癌は、リンパ節や他の臓器に転移していないことがほとんどです。そのため、手術によって根治する可能性が非常に高くなります。
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QOL(生活の質)の維持: 早期発見・早期治療を行うことで、治療後の回復が早く、通常の生活に戻りやすくなります。これは、治療に伴う体のダメージが少ないためです。
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経済的な負担の軽減: 進行した腎癌の治療は、手術だけでなく、放射線療法や薬物療法など長期にわたる場合があり、経済的な負担も大きくなる傾向があります。早期発見は、このような負担を軽減することにもつながります。
腎癌の兆候は? 自覚症状が出にくい腎癌を疑うべきタイミング
先ほどもお伝えしたように、腎癌は初期には自覚症状がほとんどありません。しかし、進行すると以下のような症状が現れることがあります。これらの症状が全て腎癌によるものとは限りませんが、もし心当たりのある場合は注意が必要です。
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血尿: 腎癌の最も多い自覚症状の一つです。肉眼でわかる赤い尿(肉眼的血尿)が出る場合と、健康診断などで初めて指摘される顕微鏡レベルの血尿(顕微鏡的血尿)があります。
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側腹部の痛みやしこり: 腫瘍が大きくなると、腰や脇腹に鈍い痛みを感じたり、ご自身でしこりのようなものを触れることがあります。
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発熱や体重減少: 原因不明の微熱が続いたり、食欲がないのに体重が減るといった症状が出ることもあります。
これらの症状は、他の病気でも見られるものです。そのため、「少し様子を見てみよう」と自己判断してしまう方が少なくありません。しかし、その「少し」が腎癌の進行を許してしまうことにつながります。
私が以前担当した高知市在住の患者様は、健康診断でたまたま尿に潜血反応があることが分かり、精密検査で腎癌が見つかりました。その方は自覚症状が全くなく、まさか自分が病気だとは思っていなかったそうです。しかし、幸いにも早期発見であったため、手術で完治し、今では元気に生活されています。この経験から、私は患者様に対して「健康診断はご自身の体からのメッセージ」と常にお伝えしています。
腎癌の診断と検査方法
「もしかして…」という不安を感じたら、まずは泌尿器科を受診することをお勧めします。腎癌の診断には、いくつかの検査を組み合わせて総合的に判断します。
画像診断で腎癌の存在を特定
腎癌の診断に最も重要なのは、画像診断です。以下の3つの検査が主に用いられます。
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超音波(エコー)検査: 体への負担が少なく、簡便に行える検査です。お腹の上から超音波を当て、腎臓の形や大きさ、腫瘍の有無などを確認します。
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CT検査: 腎臓の腫瘍の有無や大きさ、周りの臓器への広がり、リンパ節や肺などへの転移の有無を詳しく調べることができます。造影剤というお薬を点滴で入れることで、より鮮明な画像を得ることができ、腎癌の診断において最も有用な検査の一つです。
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MRI検査: CT検査と同様に、腎臓の腫瘍を詳しく調べる検査です。CTで造影剤が使えない方や、血管の状況を詳しく見たい場合に用いられます。
腎癌の病期(ステージ)分類
腎癌と診断された場合、次に重要になるのが病期(ステージ)の決定です。これは、腫瘍の大きさや腎臓内の広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無を総合的に評価するもので、治療方針を決定する上で不可欠な情報となります。
ステージは1期から4期まであり、ステージが若いほど早期であり、根治の可能性が高まります。このステージ分類に基づき、患者様一人ひとりに最適な治療法が選択されます。
腎癌の治療法:手術から最新の薬物療法まで
腎癌の治療は、病期や患者様の全身状態に合わせて、いくつかの選択肢の中から最適なものが選ばれます。
手術による根治を目指す
腎癌の治療で最も効果的なのは、手術による病巣の切除です。
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腎部分切除術: 腎臓の機能温存を目的として、腫瘍の部分だけを切除する手術です。早期の腎癌が対象となります。
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腎摘除術: 腎臓を全て摘出する手術です。腫瘍が大きい場合や、複数の腫瘍がある場合に行われます。
手術は、開腹手術のほか、傷が小さく体への負担が少ない腹腔鏡手術やロボット支援手術(ダヴィンチ)など、患者様の状態に合わせて選択されます。高知市でも、これらの先進的な治療を受けることができる施設が増えてきています。
手術以外の選択肢:薬物療法と放射線療法
進行した腎癌や、手術が難しい場合には、手術以外の治療法が検討されます。
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分子標的薬: がん細胞特有の分子を標的にして、がん細胞の増殖を抑える薬です。
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免疫チェックポイント阻害薬: 免疫細胞ががん細胞を攻撃する力を高める薬です。
これらの薬物療法は、腎癌治療の進歩に大きく貢献しており、進行した腎癌でも長期生存が可能になってきています。また、痛みの緩和など、症状を抑える目的で放射線療法が用いられることもあります。
誰もがなり得る腎癌を予防するには?
腎癌の予防には、日々の生活習慣が大きく関わっています。
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禁煙: 喫煙は腎癌の最も重要な危険因子の一つです。禁煙は腎癌だけでなく、全身の健康を守る上で非常に重要です。
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適正体重の維持: 肥満は腎癌のリスクを高めることが知られています。バランスの取れた食事と適度な運動を心がけましょう。
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定期的な健康診断: 症状が出にくい腎癌は、定期的な健康診断で早期発見されるケースが非常に多いです。尿検査や腹部超音波検査は、腎癌の発見に役立ちます。
私が診察する患者様には、「高知市の元気な高齢者」がたくさんいらっしゃいます。共通しているのは、皆さんご自身の健康に強い関心を持ち、年に一度は必ず健康診断を受けていることです。この習慣が、ご自身の健康を守り、活き活きとした生活を送るための土台となっていると感じます。
まとめ
腎癌は、初期の自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行してしまう危険な病気です。しかし、健康診断で早期に発見できれば、完治を目指せる可能性が非常に高くなります。
この記事で解説したように、血尿や側腹部の痛みなど、気になる症状がある場合はもちろん、症状がなくても定期的な健康診断を受けることが、ご自身の健康を守るための何よりの対策です。
本記事をお読みいただきありがとうございます。何かご不明な点や、お悩みがございましたら、高知市の島崎クリニックにお気軽にご相談ください。